空しさややるせなさを抱えて、少しずつだが前向きに強く日々を生きていく。
※独断と偏見で感想や解釈を語りますので、ご理解いただいた上での閲覧をお願いします
Discography
Title: 空夢
6th Album 只者 2024.6.26 Release
Music/Lyric/Arrangement/Vocal: 稲葉浩志
Arrangement/Bass: 徳永暁人
Drums: 山木秀夫
Guiter: DURAN
Keyboards: Sam Pomanti
Strings: Lime Ladies Orchestra
Thema
稲葉さんが何気ない日常に見る夢の内容の一部と、その時の心境を歌っている。
ちなみにタイトルは『そらゆめ』と読む。
Sound
前半はピアノの伴奏とギターの弾き語りが主体で歌詞を聴かせる構成がされて、後半からバンドとストリングスが一気に入りバラードとして深みが増し、楽曲内で大きく静と動を堪能できる。そして何より山木さんのドラムと徳永さんのベースが良い味だしている。前半のアコギも素敵だし後半のエレキギターもね。
自分は聴いていると何故だかやるせなさを感じる。
Lyric
イントロから感動的な美しいピアノの旋律から始まる。
夢を見た
高い崖から飛び降り 風の中 空を舞う
人々の歓声が心地よかった
何処でも行けると気付いた
冒頭から弾き語り風に夢の内容を語る。
個人的にハヤブサ・鷹・鷲のような鳥が自由に羽ばたいているのを想像しながら聴いている。ただ歓声が聞こえるようなので、ウイングスーツを着てジャンプして飛び降りている的なことなのか?それは違うよな?まあとにかく開放的で気持ちよさよう。
目が覚めれば背中の羽根は無い
いっさい何処にも辿り着いてはいない
ただ目が覚めたら夢だった。さっきまでいい気分で夢の世界にいたのに現実に叩き起こされる。確かにガッカリするよね。
こんな空しい夢なら目を閉じない方がマシです
こんな壮大な夢から突き落とされるのはもうイヤなんです
ため息ひとも漏らせないまま窓を眺める
なんでこんな空しい夢を見てしまうのだろう。悲痛な叫びと共にダーンと感情が爆発するようにバンドサウンドとストリングスが鳴り響く。いきなりクライマックスに突入しているように錯覚するようなストリングスの響きは、初めはビックリするものの聴き慣れてくると心地良さすら感じる。シリアスなんだけど明るく開放的でもある。
自分への呆気なさを痛感しているようで、アルバム『只者』ととても良く合う。ロックスターなんだけどね。
夢を見た
すべてを捨てていた 見知らぬ国の最前線
戦いを指揮し仲間を励まし敵に向かい突き進んだ
またある時の夢。
大切なものさえ捨てて戦地へ赴く。戦争という重めのテーマがここで登場。その最前線で命を賭けて勇敢に突き進む。かなりシリアスで悲惨な現場を想像してしまった。
個人的には映画『アメリカン・スナイパー』的なイメージかな。スナイパーだから最前線っぽくはないけど、リアルな戦場を想像したら思い浮かんだ。
ストリングスも壮大さの影に潜む儚さをひしひしと伝えてくる。
目が覚めれば掠り傷さえ無い
小さい自尊心 捨てる勇気もない
けど、それはまたしても夢。
果敢に立ち向かったはずなのに、その傷跡さえない。なにも成し遂げていない。むしろ自尊心さえ捨てる覚悟さえない人間だと改めて自分のちっぽけさに気づく。
感情の起伏が激しい。この落差が魅力でもある。
こんな空しい夢ならなにも見ないほうがマシです
こんな哀しい夢なら暗闇を彷徨う方がマシです
少しずつでいい 新しい自分になってみたいよ
こんな夢を見るなら、孤独で救いのない方がマシだというように叫ぶ。見たくもない夢を見てしまって、さらに辛い現場で命を張るようなこともしたはずだったからね。そういうブルーな心境になるのは僅かながら理解できる。
そして最後の一言に尽きる。一度に大きなものを背負ってしまうのは荷が重すぎる。少しずつでいいので変わっていきたいと切に願う。
間奏では溢れ出す激情が濁流のように荒々しく押し寄せる。そんなシャウトを発する。
夢を見た
なりふり構わず叫んでいた 愛するもの守るため
涙流れるままに言葉を尽くして抗議して何かに逆らおうとしていた
夢を見てしまう。これはどうしても抗えない。
今回は抗議運動をしている。自分の愛するものや大切な信念を守るため。感情も吐き出すような訴え。必死さが伝わる。
目が覚めれば体はどんより
涙の痕 それだけがある
前回までは何も残らなかったが、今回見た夢では哀しさだけが残る。残ったものがあるが辛いな。
こんな空しい夢ならなにも見ない方がマシです
こんな哀しい夢なら暗闇を彷徨う方がマシです
少しずつでいい 新しい自分になってみたいよ
本当にラストは歌詞のまま。少しずつ自分の力で道を切り拓いていきたいと思いの丈を歌う。稲葉さんらしさ満載。
ラストのサビは終始神秘的でかつ荘厳な雰囲気で自然と気圧される感覚に陥る。アウトロのギターもなんとも言えない。松本さんとは違う角度の哀愁表現だね。
締めはイントロと同じピアノ。どうやっても繰り返してしまう夢を再現しているよう。音作りの細部まで余念のない工夫を感じる。
総評
聴けば聴くほど癖になるスルメ曲。異質な構成というか表現方法のバラードだが、これこそ新しい自分になっている・チャレンジしているってことなのかなと解釈している。
稲ソロの新たな境地を体感できる。