明るく爽快にこの世を見送る、不思議な感覚に陥る作品。ファンの方々は情緒を保って聴こう。
※独断と偏見で感想や解釈を語りますので、ご理解いただいた上での閲覧をお願いします
Discography
Title: Okay
4th Single Okay 2010.6.23 Release
4th Album Hadou 2010.8.18 Release
Music/Lyric/Arrangement/Vocal: 稲葉浩志
Arrangement: 寺地秀行
Guitar: Stevie Salas
Drums: Shane Gaalaas
Bass: Jara Harris
Thema
稲葉さんなりの死への向き合い方。死生観も窺える。そして、いつかくるこの世との永訣である死をただ哀しむのではなく、死がくるまでの生ある瞬間をどうやって生きていこうかという、稲葉さんなりの結論を歌っている。
Sound
のっけからクライマックスの様相。感動的なサウンドのミディアムロック。
ファンクなカッティングしてるイメージの強いサラスだが、この作品ではギターおとなしめ。
シェーンのドラムがいい。
Lyric
テーマが重大ではあるが、サウンドや歌詞もそれに答えるよう。
感動的な足どりで坂を上ってゆくのはアナタ
とりとめのないことで友と心の底からはしゃいでいる
坂を上る=天国への階段。そこを共と仲の良い友達と談笑しながら上っている様子。
サウンドと相まって情景が勝手に思い浮かぶ。
時間が止まる景色を見てしまうといつも
それを失う未来を想ってはふるえてしまう
哀しくもヤワなこの心臓
時間が止まる景色というのは、過去の良い瞬間のハイライトかな。そういう良い時間を失うって考えると、誰もが哀しくブルーな気持ちになると思う。
Okay いつかくるボクのいない世界
真っ暗で静かな無限の空
Okay それならばもう少しだけアナタを
長く強く抱きしめてもいいよね そうだよね
死という逃れられない事実を受容し、アナタと生ある瞬間は共にしたいと強く願っている。諦観の境地に達しているようだ。
死や死後ついて考えていた時期が自分にもある。学生時代だ。不安や恐怖など寂寥感に苛まれ、なかなか受容できるものではなかった。ただ、大人になってからは自然と考えなくなった。考えても先はなく時間の無駄だし、好きなことを楽しみたい気持ちのほうが勝っているからだ。
稲葉さんも人間。生ある限り、死という事実と向き合うこともあるのだ。
それにしても、『Okay』と軽く一言で済ます感じよ。下手にネガティブになるよりいいけど、いちファンからするとちょっぴり寂しい。けど、稲葉さんは明るく爽快に歌う。ギャップが凄まじい。
ただ一部のファンはしっとり歌ってほしいという意見を述べているが、自分は爽快に軽やかに歌う現在のスタイルでいいと思う。それが稲葉さんなりの表現方法だし、自分も稲葉さんの生死感に共感できるから。
あと稲葉さん的には死後の世界は、無ということがわかる。
色あせた家族写真 その時ボクらは何を夢見た
今日は今日で近い将来 古き良き時代と偲ばれるだろうか
ふと過去を振り返る。
今この瞬間は振り返るとどう見える・思うのだろうか?
今自分はまだ幼児の子供を育児しているが、大人になって巣立つ時に振り返るとどういう思いになっているのか?とかは思う。その時になってみたいと実際わからない。
あれよあれよ選択肢を失くしてゆくeveryday
どこかまで遡れるとしたどこにするだろう
そこに希望はあるのでしょうか?
生きていると選択肢は狭まる。歳をとって考え方が凝り固まったり、結婚や子供ができるとね。仕方ないけど。
かといって、タイムマシンで過去に戻ってやり直しても、それは正解なの?と現状を肯定するかのような歌詞。実際にはできないし、考えたとしても意味なく悶えて終わるからね。前を向くように軌道修正させてくれる。
Okay いつかくるアナタのいない世界
埋められない穴をかかえさまよう
Okay 泣かないで恐がらなくていいよ
終わりがあるから誰もが切なく輝ける
今度は大切な人がいなくなることを考える。そしたら、心にポッカリ穴が空くよう。
自分も祖父が亡くなった時は似た感覚だった。幼い頃から当たり前にいた存在だったからね。山に水汲みに行ったり、お手伝いをしたり。当時は何も考えないでいたけどね。実際にその時がこないと有り難みがわからない。ここでサビ前の歌詞の偲ぶ感情とリンクする。
ただ泣いたり恐がる必要はない。誰しも死という終わりがあるからこそ、人生は美しいんだと説く。自分もそう思う。
夕暮れグラウンドに響く声
川面をすべる小石の影
何気ない日常風景。夏の夕暮れ、お盆の時期を勝手に想像してしまった。
自分も学生時代など上記の風景に遭遇している。田舎だし小石で水切りする人案外いたしね。ワンパク小学生から犬の散歩してるおじさんもしてた。
誰かの不幸せの上に成り立つ生活
昔から気づいてるよ
ヘンチクリンな笑顔見せて歩いているボクはナニモノ?
常に誰かを踏み台にして生きている。そんな現実に気づく。否定はできない。資本主義社会は資産を利益を奪い合ってもぎ取るもの。大雑把で申し訳ないが、誰かが利益を得たら誰かが不利益を被る。しかも、コーラスで『It's My Life!!』と。誰もが被害者であり加害者になりえる。まぁ資本主義社会でなくとも、保険屋・葬儀屋・医療関係も基本的に誰かが傷つかないと動けない。マイナスがあるからこそ、それをプラスにできる側面もある。
それに気づきつつも笑っているボクはナニモノなの?どんな人間?只者かな?
Okay いつかくるボクのいない世界
真っ暗で静かな無限の空
Okay それならばもう少しだけアナタを
長く強く抱きしめてもいいよね そうだよね
それでも尚、苦悩を抱えて愛に溢れて生きたい!という結論に至る。
最後まで聴くと、明るく見送る感じがして向こうの世界でも元気かな?って思える。悲観しないで済む。そう感じるのがこの楽曲の良さの1つかも。
総評
誰もが抱えたことであろう不安要素、死という終わりを受け止め、生きている間は愛に溢れるように美しく輝けるようにしようと歌っている。
我々は死という終わりがある尊く儚い生命体。そういう自覚を持つことが大事だとも教えてくれている。ありがとう。
ライブで聴くと更に好きになる曲。
MVもあるが、初見だと不穏に感じてしまうかも?
真っ白な世界に稲葉さんが1人。そして、空から人がふってくる。