銀色の念書

思いの丈を綴ります。

誰か僕の名前を呼んで

稲葉浩志 3rd Album Peace Of Mind

無意識で助けを乞う、悲痛な叫び。

※独断と偏見で感想や解釈を語りますので、ご理解いただいた上での閲覧をお願いします

Discography

稲葉浩志

Title: 透明人間

3rd Album Peace Of Mind 2004.9.22 Release

Music/Lyric/Arrangement/Vocal: 稲葉浩志

Arrangement/Bass/Acoustic Guiter: 徳永暁人

Electric Guiter: Stevie Salas

Drums: Greg Upchurch

Thema

非行に走ってしまった少年の心情を描いている。

Sound

ピンと張り詰めた緊張感が常に走り、終始シリアスで重苦しい雰囲気を放つ鬱ソング。

稲葉さんが抱えている心の闇を盛大に露呈してしまったような楽曲になっている。憂鬱で重苦しい澱んだ空気感が耳から伝わってきてちょっぴり怖いよね。

テーマとなっている非行に走るしかなくなってしまった少年の心情が辛く悲しい。行き場の無い沈んだ感情を内に秘め続けて、最後には暴走してしまった感じが切なくてね。健気な少年っぽいから余計にね。それを稲葉さんの歌唱表現が上手くて聴き入って、歌詞の世界にどっぷり浸かってしまう。

徳永さんのアレンジも流石だし、何気にサラスのギターも緊張感あっていいよね。

Lyric

重苦しいピアノの響き。怖いわ...。

透明人間みたいにどこでもゆける うらやましいだろ

教室の中でも廊下を走っても みんな見てないみたい

透明人間っていうとポップな話題になりがちだけど、稲葉さん的には違うようだね。

誰からも相手にされないで何してもいい。僕の考える最強の自由ってやつかな?

なんて自由なんだろう 波のない海

けれども誰も反応しないから何も起きない。自由だけど虚しさに塗れる。

だれかぼくの名前を呼んで だれでもかまわないよ 早く

今日はやけに暑い日だよね 喉は渇いてる

伝言はありませんか?

周りから自分が見えないからか、話しかけられないし話す相手がいない。自由故の孤独に苛まれる。

暑い日っていうのが引っかかる。ただ単に飢えて心が渇いているのか?

低い声で「伝言はありませんか?」と問われると心臓に悪い。というか誰に聞いているんだ?

商店街を歩いてバスに乗り込んでも 何も起きないよ

知ってる人は何人かすれちがったけれど 見てるのはカメラだけ

ファンタジーな透明人間だと思っていたら、どこに出向いても無視されてしまう虐められた人間の物語であった。急にリアリティーが出てきて恐怖に陥る。

ズボンのポケットの ナイフは少しひんやり

そんな僕を虐める奴らへの仕返しを企む。

毎回ここ歌われるとゾクッとする。嫌な予感しかしないから。

だれかぼくの名前を呼んで だれでもかまわないよ 早く

このシャツを脱ぎ捨ててみたい 空に放り投げたい

伝言はありませんか?

僕を無視して虐めないでと悲痛な叫びを漏らす。自暴自棄に陥ってしまいそうな予感。

ここの「伝言はありませんか?」は無視してくる奴らへの最後の捨て台詞みたいな問い掛けにも聞こえた。

ここのギターの暗く頼りない感じの音が歌詞の主人公のイメージと不覚にもピッタリと当てはまってしまう。

真夜中に目が覚め 天井に手をのばす

安心して寝付けず、このままではいけないと覚醒してしまう。

このふと突然やってくる衝動がリアルよね。鬱とか精神的に不安定な人って突然不安に襲われたりするよね。そういう突発的な症状が起きたのかな?

だれかぼくの名前を呼んで だれでもかまわないよ 早く

景色はぜんぶ ゆがんでゆくよ 熱にうなされて

おかあさん

僕はあの時 光をめざして 最高の世界を夢に見ながら

せいいっぱいあなたの海を泳いだよ

そしてもうどこかに行きたい

母の温もりに包まれて希望に向かって産まれてきたはずなのに、思考はもう希死念慮に染まっているように感じた。憂鬱さというか陰鬱さに塗れた歌詞と音が更に不安を誘う。

「おかあさん」が不気味な程に優しい声色で、健気な少年が闇に堕ちてしまうようなコントラストが絶望的。稲葉さんの表現力に脱帽。

世界よ僕の思い通りになれ

いつか僕の思い通りに 思い通りになれ

最後はもう自分の妄想した通りになれ!と溜まりに溜まった感情が爆発してしまう。もう自暴自棄的な感じだ。

サラスのシリアスなギターの旋律が良く合う。

総評

アルバムタイトルである心の平穏とは程遠い存在に位置するような、暗くぐちゃぐちゃに入り混じる感情が爆発するようなシリアスバラードだ。もうアルバム内外でも異色中の異色。ピアノの感じは「Tamayura」感あるけど、雰囲気はまるで違うか。

「マグマ」あたりのネガティブな暗さもありつつ、ニュアンス的には思春期特有の暗い部分を前面に押し出したものだ。

辛い青春を過ごした過去を持つ人に聴いてもらいたい。暴走しないで今それなりに生きている幸せを噛み締められる。少なくても自分はそう。