未知なる苦難の道を走り抜け、不安を掻き消しながら進む。
※独断と偏見で感想や解釈を語りますので、ご理解いただいた上での閲覧をお願いします
Discography
B'z
Title: Highway X
22th Album Highway X 2022.8.10 Release
Music/Arrangement/Guiter: 松本孝弘
Lyric/Arrangement/Vocal: 稲葉浩志
Arrangement: Yukihide "YT" Takiyama
Drums: Brian Tichy
Bass: Rhonda Smith
Piano: 小野塚晃
Tambourine/Cowbell: 斉藤ノヴ
Thema
先の見えない不安を克服し、道を切り拓く。それをコロナ禍と比喩し反映させた歌詞。
他にも考えられるとしたら、B'zのサポートメンバーの一新。これまでの歴史で様々スクラップ&ビルドを繰り返してきたが、前回の『NEW LOVE』ツアーで増田さん・シェーン・バリーという長年務めていたメンバーがガラリと変わって、今回はコロナ禍でまた大幅なメンバー変更を余儀なくされた。そういったバンドの背景もテーマに影響していそう。
Sound
なんとも煮え切らないようなサウンド。それがコロナ禍でのゴールの見えない不穏な世界観を表現しているようだ。パーカッションもバランスがほどよく丁度よく配置されていて、緊張感を損なっていないサウンド作りになっている。
稲葉さんも楽曲に合わせてか基本低音ボイス。若干高いキーあっても声を張り上げていない。
アウトロのギターリフは『Real Thing Shakes』っぽく聴こえる。
あと思ったのはブライアンのリズムの取り方が独特で好き。癖になる。
Lyric
イントロはタイトルのような未知なる道があり、蜃気楼で先はぼやけているようなギターサウンドから始まる。そこからリズム隊が入り、蜃気楼の奥からB'zのお二人がザッザッと歩み寄って現れてくるようなイメージ。そんな映像が脳内に表示される。
晴れ間のないサマー 外れる予報
霧に咽ぶ朝 君に会おう
久しぶりだね
恥ずかしげなまま
元気でしたか?
曇って晴れ間の見えない天気とコロナ禍を比喩したような歌詞となっている。人と会う頻度がめっきり減って、リモートでなく対面で接するのが物恥ずかしい様子。
自分もそうだった。久しぶりに会ってなんて話を切り出せばいいのか戸惑ったり、話題もワクチンとかのデマも流れてセンシティブで触れにくかったり。コロナ禍前と変な距離ができてた気がする。嫌な思い出だ。
その笑顔さえも今や朧
思い出だけを灯りにしよう
今を見つめて
確かな行方を推し測る
約2年は続いたからね。人の顔も若干あやふやになる。けど、大切な思い出だけは忘れないように人生を慎重に生きる。
実際手探りで感染症対策とかしたからね。それを『推し測る』ってワードでまとめている。
誰もが振り落とされそうなスピードで
世界はガラガラ回ってる
世界が一瞬にして混乱に陥った。確かにあの時の絶望の空気感はなんとも言えなかったなあ。
けど、コロナ禍に限らずロシア・ウクライナの問題もそう。簡単に世界の様相は変わる。
おいでよ暗雲のDays
心臓に耳すまし
走ろう謎めくHighway
でたらめな喧騒忘れて
濡れた風を切るよ
コロナウイルスの偽の情報。ワクチン接種に関するデマ。他県への移動自粛の時、車のナンバーだけで迫害するような浅はかな思考の人間。いろいろあったな。
そういった混沌とした世間を忘れるほど自分の今やれる使命を全うしよう。そして世間が哀しみに溢れている中、ただただ走っているよう。
B'zらしい真っ直ぐな姿勢が表れている。
世の中のせいにしたくなるね
それでもいいさ 責められない
試される日々
いずれ疑いは晴れるだろう
こればっかりは世の中のせいにしていいと思う。まあ中国のせいだけど。
未知なる騒動だがいずれは終わりがくるだろう、と前向きに事を捉える。
日々の小さなこともそう。周りからとやかく言われようと、誠心誠意対応していれば報われるだろうと歌う。B'zのこれまでの歴史とも重なるな。
今までとは違って見える君の仕草に
なぜか胸は高鳴る
ネガティブにならず混沌とした世間・コロナ禍を楽しんでいるよう。
リモートで距離は離れてるけど相手の部屋の中が見えたりしたりね。その人の生活の一部が垣間見える時はドキドキするよね。あとは久しぶりに会ってまた違った君を再確認するとか。そういう情景が浮かぶ歌詞。
おいでよ暗雲のDays
愛だけを抱いて
走ろう未知なるHighway
野暮な教えを忘れ
僕ら照らす火を守る
ただひたすらに愛情を持って人生を生きるしかない。不純というか非道なことはせず、希望の火が消えないようにする。
Let it come
Let it go
We never stop
世界は、地球は動きを止めない。だから私たちは決して立ち止まらず動き続けるのみ!そう宣言しているようだ。
おいでよ暗雲のDays
英雄を夢見て
歩もう無知なるHighway
敗北の香りを蹴散らし
塵に戻って行くだけ
誰もが初めて経験したパンデミック。それぞれの正義を振り翳して英雄になろうとしている。厄介な世の中だ。そんな危ないやつらに負けないために自分の道を貫く。
ラストの『塵』は『FIREBALL』の『灰』的なイメージなのかな?
そして、この後に『Real Thing Shakes』っぽいギターフレーズが入って転調する。明るい兆しを見出せるようなサウンドに聴こえる。
踏み出し陽に晒され
人にぶつかって
悲しみを経て
最後に喜び見つける
行動すれば困難を乗り越えれば、最後には希望を見出してみせると意気込む。
サウンドも晴れ間のないジメジメと鬱陶しい夏空の雲の隙間から日の光が射すようだ。
総評
アルバムのタイトルチューンということもあり、なかなかに聴きごたえがある楽曲となっている。重苦しいダークな霧に覆われているようなギターサウンドと、ピアノの旋律がどことなく漂う緊張感を表現していて癖になる。
そしてラストはポジティブな様相で終わる。似た曲だと『光芒』。ただこれとは違ったテイストの希望の表現になっている。
とにかく、近年発表された楽曲の中でお気に入りになっている。